統合失調症 その2

大学に行かなくなった息子について……20歳 男性(父親の相談から)

(個人が特定できないようにしてあります)

経過
大学に入学し1年目は、時々大学に行けないことはあったが何とか単位は取れて2年生になれた。2年生なって5月ごろから、朝寝坊して大学を時々休むようになった。昼夜逆転し、自室で過ごすことが多くなり家族との会話が減っていった。疲労感を訴え食欲がなくなってきたので、母親の強い勧めで近くの内科を受診したが身体に問題はないと言われた。また、落ち込んでいるようだからメンタルクリニックを受診し相談するように勧められた。

うつ病として抗うつ剤、抗不安薬を投与された。一時は表情が明るくなり口数も増えたのですが、2か月を経過しても外出をせず暑い日もカーテンを閉め切って自室で過ごすことに変わりはなかった。

ある日、「監視カメラが家に仕掛けられている」と言い出し家中を探すことがあった。「TVが自分のことを言っている、口にしたことが周囲の人に知られてしまう」と言い、小声で話すようになった。様子が変わってきたので通院先の担当医に報告したところ、統合失調症と診断が変更され処方薬も抗精神病薬に変更された。本人も家族も十分な説明を受けたので受け入れることにした。服薬を続けたところ、監視カメラなどの妙なことを言うことはなくなり家族との会話も増えていった。

しかし、大学に行くことはなく、自室に閉じこもっていることが多かった。不安になった父親が登校を促したり、一緒に外出しようと誘っても応じることはめったになかった。

耐え切れなくなった父親がセカンドオピニオンを求めて当クリニックに相談に来た。「登校するようにと言っても出かけようともしない。家族と一緒に食事はしないし声をかけても返事をしなくなった。何を考えているのか。」など息子さんに対しての誰にも言えない愚痴・不満をぶちまけるように語り続けた。

一段落したところで、医師が「大変ですよね。期待通りにことがすすまないので焦りますよね。」と述べると父親はうなずいた。「お父さんは息子さんのマイナスのことしか言いませんけど、息子さんにいいところはないのですか。」父親はしばらく黙ったままでした。医師は続けて「息子さんは周囲が気になって、いつも不安がいっぱいで、でも何とかしなければと焦りのかたまりになっているのかもしれません。」「きっと私たち以上に一生懸命かもしれませんよ。チャンスがあったら、頑張ってるな、と言ってあげてください。」と言いました。父親はしばらくの沈黙の後、「そうかもしれません、私は息子を責めてばかりいました。」と。

父親自身も不安な状態が続き不眠を呈していました。息子さんはそのまま通院中のクリニックに通い、父親は当クリニックに通うことになりました。

その後、息子さんは休学手続きをとり、近くのデイケアに週4回通うようになり畑作業を中心に活動するようになりました。時々、体がだるいと言いますが、家に閉じこもることはなくなりました。デイケア通所を続けて自信を取り戻して、復学を目指したいということです。

統合失調症の発病
この方のように、うつ病に似た症状で発病することがあります。身体の不調、不安発作などの不安症状が目立っていたり、数日間の不眠を経て興奮状態になることもあります。発病時の症状は様々です。多くの方は発病前の一定期間、人との関わりを避けるようになります。学校、会社に行かなくなる、友人と付き合わなくなり外出をしたがらなくなります。

統合失調症の治療
幻聴や妄想は薬物療法により軽快していきます。発病時期は思春期・青年期が多いですから、学業や勤務が療養生活のため中断されることがあります。急性期は療養に専念する必要がありますが、一人で外出ができるようになるなど一定の回復が得られたらデイケアや就労支援センターなどの社会資源を利用して活動性を高め自信を養成していきます。外来治療は長期にわたって継続することが大切です。

近年、統合失調症は軽症化してきています。

例に挙げた方のように入院しないで回復していく方が多くなっています。

薬物療法について
統合失調症に対する治療薬の開発に目覚ましいものがあります。幻覚・妄想に対してのみならず、気力や意欲低下にも効果が期待できる抗精神病薬が次々と登場してきています。

神経伝達物質の一種であるドーパミンの過活動を調整する従来の抗精神病薬から、さらにヒスタミン、コリン、アドレナリン系などにも作用する新型の抗精神病薬が主流になってきています。新型の抗精神病薬は高い治療効果が得られるとともに下に示す副作用が少なくなっています。

―副作用―

(1)パーキンソン症候群(筋肉が円滑に動かなくなる、手が振るえる、など)
(2)高血糖・体重増加
(3)便秘・排尿障害
(4)眠気・めまい
(5)性機能障害(生理不順、勃起不能)
ただし、副作用の出現は出やすい人と出にくい人がいて、個人差があります。
副作用と思われたら早めに主治医に相談してください。

まとめ
統合失調症は、脳内の神経伝達物質が部分的にアンバランスになる病気です。人間性に異常をきたすものではありません。近年は、(1)症状の軽症化、(2)新型抗精神病薬の開発、(3)社会資源の整備、(4)病気の知識が普及してきたこと、などから病気から回復する方が多くなってきています。多くの方が就労し、結婚し、家庭を築いています。厳しい闘病生活を強いられますが、回復をあきらめる病気ではありません。