中高年のうつ

---うつ病から回復した父 (娘さんの報告)---

発病後の経過
元気だった父にいつもの笑顔が見られなくなりました。定年退職して1年たった頃でした。ダジャレを飛ばし家族を笑わせていた父が変わってしまいました。好きなゴルフにも行かないで家にいることが多くなりボーッとしていることが目立ってきていました。

娘の私が父の変化に気づいて不安になりクリニック受診を勧めました。うつ病の診断で治療を始めて半年がたちました。今では、すこしずつ笑顔を取り戻し、時々ゴルフの練習場に行っているようです。母とデパートに出かけデパ地下の食料品売り場をめぐるのが楽しみのようです。目標は夫婦で念願の外国旅行をすることだそうです。

うつ病の特徴
中高年はうつ病にかかりやすい年代です。

 うつ病の症状は、
(1)気分が落ち込み、
(2)興味や関心がうすれ、
(3)意欲がなくなり活動性が低下するのが特徴です。

例に挙げたお父さんは、気分が落ち込み笑顔が消え、好きなゴルフに関心がなくなり、外出をしなくなりました。うつ病の主要な症状がそろっています。

さいわいに娘さんが気づいて早期に治療にむすびつきました。このようにご家族が気づくところから治療が始まることが多い病気です。

うつ病のきっかけは一様ではありません。退職や友人・家族を失う喪失体験、生活や環境の変化、加齢に伴う体力低下・病気といった身体要因などがあります。これらがストレスになって発病することが多いのです。

うつ病の治療
 治療は、休養とSSRI(a)やSNRI(b)を中心とした抗うつ薬による薬物療法、そして適切な精神療法です。生活のしかたに工夫をし、家族に患者さんへの対応について協力をしていただくことがあります。うつ病は再発することがあります。再発予防の方法も一緒に考えます。

うつ病は治療によって回復できる病気です。早期発見・早期治療がたいせつです。

(a)(b)の説明の説明
SSRI:脳内物質のセロトニンの濃度を高めることによって、うつ状態を改善する薬の総称です。日本では、パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)などが用いられています。

SNRI:セロトニンだけでなくノルアドレナリンにも作用して、うつ状態を改善する薬です。日本では、ミルナシプラン(トレドミン)が使用されています。